森田望智(もりた・みさと) Pick Up Interview

さまざまな役柄を体あたりで演じて、出演した作品が話題に。数々の映画賞を受賞し“実力派女優”として今一番注目を浴びている森田望智さん。2月27日に公開される映画『レンタル・ファミリー』では、新郎に米国人男性をレンタルする35歳の女性を演じます。ハリウッド映画で描かれる日本、人をレンタルする人が抱える本当の気持ち、演じてみてわかった感情を語ってくれました。

日本人が大切にしたい日本が描かれた作品

長編デビュー作『37セカンズ』がベルリン国際映画祭などで絶賛され、今最も映画界で注目を浴びる存在となった、アメリカを拠点とする日本人監督HIKARIさん。もともと彼女の作品のファンだったことから、『レンタル・ファミリー』のオーディションを受け、「佳恵」役を手に入れた森田望智さん。佳恵は外国人の新郎をレンタルし、結婚式を挙げる女性です。

「佳恵は自身のアイデンティティーを両親に打ち明けられずに生きてきた35歳の女性。両親を傷つけず、安心させたいという思いから、自分の結婚相手をレンタルするんです。真実を打ち明けるよりも、嘘をついてでも全員がハッピーになれる方法を佳恵は選択したのだと思って演じていました。佳恵を演じるにあたり、当事者の方々とお話しさせて頂き、家族の理解を得られないまま生活している方も多く、打ち明けることには大きなリスクがあるのだと改めて知りました。『真実だけが正論ではない』ということを実感し、佳恵の気持ちに少し寄り添うことができたように思います」

劇中では白無垢やウエディングドレスを着て、伝統に則った結婚式を体験した森田さん。100%日本ロケのこの作品には、あらゆる場面に日本の伝統的な文化が刻まれています。

「初めて白無垢を着させていただいたのですが、厳かな感じがしてとても素敵だなと思いました。結婚式だけでなくお祭りなど、この作品では日本の文化を映像に取り入れているのですが、単に海外作品の中で日本を描くということでなく、日本人が大切にしたい日本が描かれていると感じました」

佳恵のレンタル夫となったフィリップを演じたブレンダン・フレイザーさんは、共演した日本人俳優について「“仕事をもらえて光栄だ、また雇ってもらえるといいな”という気持ちを失わない、謙虚さとプロ意識を持っている」と絶賛します。森田さんもブレンダンさんと共演して、心を動かされたことがあると語ります。

「毎回お仕事をいただけることは決してあたり前ではないと感じていて、目の前の仕事の1個1個を後悔なく、できるだけ役に近づけるように頑張りたいという気持ちがあります。レンタルファミリー社の経営者、多田役の平 岳大さんはたくさんの海外の作品の出演歴をお持ちですが、ハリウッド作品はひとつのシーンを何度も撮影したり、素材をたくさん撮っておいてあとから合成することも多いのだそうです。ブレンダンさんのお芝居は毎回少しずつ違いがありながらも、“変えよう”としている印象が全くないんです。あまりにも演技が自然なので、ブレンダンさんに『演技をする上で心がけていること』をお聞きしたました。すると、『レス・イズ・モア(Less is more)[少ないことは、豊かなこと]」とおっしゃられました。ごく自然に少しずつ違うのは、あれこれ考えすぎずに“役を生きている”からだと気づかされました。私自身が目指すべきところを示していただいたような感覚でした』

レンタルファミリーも誰かを幸せにする職業だと思う

実は日本各地に存在すると言われる、レンタル家族産業。森田さんは、人をレンタルすることにどんな思いを感じているのでしょうか?

「正直言うと最初は、自分をよく見せるための虚栄心だとか、自分を守るための自己防衛の嘘だったりとか、そういったイメージがありました。でも今回この作品で演じさせていただいて、誰かを傷つけないためだったり誰かを守るためだったり、どうにもならない状況を少しでも前向きにしようとするための嘘もあるのだと感じるようになりました。嘘が必ずしも悪いものばかりでなく、誰かを思う気持ちから生まれるものもあるかもしれない。お芝居の仕事をさせていただいているからこそ感じた部分でもあったと思います。レンタルファミリーに限らずですが、どの職業でも光のあたる部分もあれば影の部分もある。その中で、レンタルファミリーも誰かの幸せにつながる職業のひとつではないかと感じています」

HIKARI監督は、「映画の終わりに観客が「自分の人生でどんな役割を誰に演じてもらうか」自問自答してするのを願っている」とコメントしています。森田さんならば、どんな人をレンタルしてみたいか聞いてみると……。

「私は旅行が好きなんですが、海外にひとりで行ったときに飲食店などに入ると、ひとつのメニューの量が多いので1種類しか食べられないじゃないですか。だから、食べるときはいろんな種類を食べるために、一緒に食べる人を4、5人をレンタルできたらいいなと思います(笑)」

たくさんの作品が公開される春。最後に、この映画を『Bup』(美アップ)の読者にどんなふうに観てほしいかを語ってもらいました。

「この作品は“レンタルファミリー”という職業がフォーカスされていますが、どんな仕事でも続けていけば人との関わり、縁が増えていきますよね。素敵な出来事が起こったり、思いやりの感情が生まれたりするのは、人と人との関わりでしか生まれないもので、人生を豊かにするものだと感じさせてくれます。この作品が、新たな縁を作っていきたいと思うきっかけになったらうれしく思います」

森田望智(もりた・みさと)
1996年9月13日生まれ、神奈川県出身。2011年俳優デビュー。
近年の出演に、NHK連続テレビ小説『虎に翼』(24年)、テレビ朝日系『ザ・トラベルナース』(24年)、Netflix映画『シティーハンター』(24年)、映画では『火喰鳥を、喰う』(25年)、『ナイトフラワー』(25年)、『ほどなく、お別れです』(26年)、舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(26年)などがある。
2027年度前期NHK連続テレビ小説『巡るスワン』では、主演が決まっている。

『レンタル・ファミリー』

2月27日(金)より、全国にて公開
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

【監督】HIKARI
【出演】ブレンダン・フレイザー、平 岳大、山本真理、ゴーマン シャノン 眞陽、柄本 明、木村 文、安藤玉恵、森田望智、篠﨑しの、板谷由夏、真飛 聖

米国人のフィリップ(ブレンダン・ブレイザー)は、東京で暮らす落ちぶれた俳優。日本での生活に居心地の良さを感じながらも、本来の自分自身を見失いかけていた。そんな中、レンタル・ファミリー社の経営者・多田(平 岳大)からスカウトを受けて所属することになった彼は、結婚式の“新郎役”の依頼を受ける。なんとか無事に結婚式を終えたあと、新婦の佳恵(森田望智)が結婚式を依頼した秘密を知る。“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事に出会い、想像もしなかった人生の一部を体験する。そこで見つける、生きる喜びとは?

撮影/平林直己 スタイリング/黒崎彩(Linx) ヘア&メイク/Tomomi Shibusawa(beauty direction) 取材・文/山西裕美(ヒストリアル)

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